これだけの旅をしている人がいうと納得できてしまう

沢木耕太郎ミッドナイト・エクスプレス』(文藝春秋、2004年)

深夜特急 第十三章 使者として トルコ」より
 

p.p508〜509

 旅は人生に似ている。以前私がそんな言葉を眼にしたら、書いた人物を軽蔑しただろう。少なくとも、これまでの私だったら、旅を人生になぞらえるような物言いには滑稽さしか感じなかったはずだ。しかし、いま、私もまた、旅は人生に似ているという気がしはじめている。たぶん、本当に旅は人生に似ているのだ。どちらも何かを失うことなしに進むことはできない……。


トルコのイスタンブールでの思いを綴ったもの。香港では湧き立つような興奮があったが、イスタンブールではそれがない。毎日が祭りのようだった香港での日々から、長い時間をかけ多くの土地を通り、そしてイスタンブールまで到着した。しかし、ここにはそれがない。


どうやら、ロンドンまでの旅路もあとわずかになっているようだ。




ミッドナイト・エクスプレス (沢木耕太郎ノンフィクション8)

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