自戒の念を込めて、この文章を引用する

千本健一郎『「いい文章」の書き方』(三笠書房、1994年)

「自分についての上手な書き方」p.p96-97

・・・世の注目を浴びている人ならいざ知らず、とくに名もない普通の人が自分の身にまつわることを、ただずらずらと並べただけで人さまが読んでくださるものかどうか。はなはだ心もとない。
 自分の書いたものを他人に読んでもらい、なにがしかの印象を残してはじめて一人前の文章になる。手っ取り早いから自分のことを書くといっても、机の引き出しにしまって、一人でこっそり読んでいるだけでは、文章として存在したことにはならない。人に読まれるためには当然、人さまの目を向けさせる工夫なりしかけなりが必要になる
 自分のことならまかせといて、とやみくもに書いただけでは、手前勝手な熱の吹きまくり。とくとくとおのれの心境を吐露するだけの一人芝居に終わりかねない。
 自分を語りながら他人の体験やら反応やらに目をくばっていないと、見物人が近寄ろうともしない芸に熱中する、あわれな大道芸人と変わらないことになる。
 ところが、世にも身近な主題を扱っている、という思いこみがあるから、題材としても「自分」に四方八方から光を当てて説き明かそうという気に、めったにならない。
 これでは思いつき以上の自画像が出てくるわけがない。他人の目を意識しない自画像には、メリハリも緊張感もありっこない。


机の引き出しにしまって、一人でこっそり読んでいる


この部分を適当に言い換えれば、まさに現在のブログ界にも該当する部分は多い。


そして、自分が「とくに名もない普通の人」だということを改めて意識せざるを得ない。